検索結果詳細


 wx




 『化鳥』 青空文庫

いつでもあの翼《はね》の生へたうつくしい人をたづねあぐむ、其昼《ひる》のうち精神《せいしん》の疲労《つかれ》ないうちは可《いゝ》んだけれど、度が過ぎて、そんなに晩《おそ》くなると、いつもかう滅入《めい》つてしまつて、何だか、人に離れたやうな世間《せけん》に遠ざかつたやうな気がするので、心細《こゝろぼそ》くもあり、裏悲《うらかな》しくもあり、覚束《おぼつか》ないやうでもあり、恐《おそ》ろしいやうでもある、嫌《いや》な心持《こゝろもち》だ、嫌《いや》な心持《こゝろもち》だ。
早《はや》く帰らうとしたけれど気が重くなつて其癖《そのくせ》神経《しんけい》は鋭《するど》くなつて、それで居てひとりでにあくびが出た。あれ!
赤い口をあいたんだなと、自分でさうおもつて、吃驚《びつくり》した。

 233/ 234/


  [Index]