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 『婦系図』 青空文庫

 それから名物だ、と云って扇屋の饅頭を出して、茶を焙《ほう》じる手つきはなよやかだったが、鉄瓶のはまだ沸《たぎ》らぬ、と銅壺から湯を掬《く》む柄杓《ひしゃく》の柄が、へし折れて、短くなっていたのみか、二度ばかり土瓶にうつして、もう一杯、どぶりと突込む。他愛《たわい》なく、抜けて柄になってしまったので、
「まあ、」と飛んだをして、斜めに取って見透《みすか》した風情は、この夫人《ひと》の艶《えん》なるだけ、中指《なかざし》の鼈甲の斑《ふ》を、日影に透かした趣だったが、

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