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『婦系図』 青空文庫
「まあ、」と飛んだ顔をして、斜めに取って見透《みすか》した風情は、この夫人《ひと》の艶《えん》なるだけ、中指《なかざし》の鼈甲の斑《ふ》を、日影に透かした趣だったが、
「仕様がないわね。」と笑って、その柄を投《ほう》り出した様子は、世帯《しょたい》の事には余り心を用いない、学生生活の俤が残った。
主税が、小児《こども》衆は、と尋ねると、二人とも乳母《ばあや》が連れて、土産ものなんぞ持って、東京から帰った報知《しらせ》旁々《かたがた》、朝早くから出向いたとある。
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