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 『婦系図』 青空文庫

「来るもんですか。義兄《にいさん》(医学士――姉婿を云う)は忙しいし、またちっとでも姉さんを出さないのよ。大でれでれなんですから。父さんはね、それにね、頃日《このごろ》は、家族主義の事に就いて、ちっと纏まった著述をするんだって、母屋に閉籠《とじこも》って、時々は、何よ、一日蔵の中に入りきりの事があってよ。蔵には書物が一杯ですから。父さんはね、医者なんですけれど、もと個人、人一人二人の病《やまい》を治すより、国の病を治したい、と云う大《おおき》な希望《のぞみ》の人ですからね。過年《いつか》、あの、家族主義と個人主義とが新聞で騒ぎましたね。あの時も、父様《とうさん》は、東京の叔父さんだの、坂田(道学者)さんに応援して、火の出るように、敵と戦ったんだわ。

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