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 『婦系図』 青空文庫

 そんな事はどうでも可いが、不思議なもので、早瀬と、夫人との間に、しきりに往来《ゆきき》があったその頃しばらくの間は、この家に養われて中学へ通っている書生の、美濃安八《みのあはち》の男が、夫人が上京したあと直ぐに、故郷の親が病気というので帰っていた――これが居ると、たとい日中《ひなか》は学校へ出ても、別に仔細は無かったろうに。
 さて、夫人は、谷屋の手代というのを、隣室《となり》のその十畳へ通したらしい、何か話声がしている内、
「早瀬さん――」

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