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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 団扇で顔を隠さしったなり、背後《うしろ》へ雪のような手を伸して、荷車ごと爺どのを、推遣《おしや》るようにさっせえた。お手の指が白々と、こう輻《やぼね》の上で、糸車に、はい、綿屑がかかったげに、月の光で動いたらばの、ぐるぐるぐると輪が廻って、爺《じじい》どのの背《せなか》へ、荷車が、乗被《のっかぶ》さるではござりませぬか。」
 「おヽおヽ、」
 と、法師は眼を〓《みは》って固唾を呑む。

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