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『古狢』
青空文庫
「大きな店らしいのに、寂寞《ひっそり》している。何屋だろう。」
「有名な、湯葉屋です。」
「湯葉屋――坊主になり損《そこな》った奴の、慈姑《くわい》と一所に、大好きなものだよ。豆府の湯へ箱形の波を打って、皮が伸びて浮く処をすくい上げる。よく、東の市場で覗《のぞ》いたっけ。……あれは、面白い。」
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