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『五大力』 従吾所好
所々、雨の中へ、霧がかゝつた状に見えるのは、汐のさした薄明りで、……其物置の背後は、心覚えに違はなければ、高橋通り、扇橋をかけて、八幡の裏を、二十間堀の流なのである。
二ツ三ツと、物置の間に隙間のある、其処を通れば水が見えた。降続いたのに、又宵の雨。水溜に搗〈か〉てて加へて、だぶ/\と汐がさす。底光りする濁つた水が、三日月もかけず、柳の影を、華奢な骸骨のやうに映しながら、びしや/\と溢れかゝつて、其が足駄まで陰に響く。
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