検索結果詳細


 『五大力』 従吾所好

 二ツ三ツと、物置の間に隙間のある、其処を通れば水が見えた。降続いたのに、又宵の雨。水溜に搗〈か〉てて加へて、だぶ/\と汐がさす。底光りする濁つた水が、三日月もかけず、柳の影を、華奢な骸骨のやうに映しながら、びしや/\と溢れかゝつて、其が足駄まで陰に響く。
 かと思ふと、真暗に成る。……ト又前途〈ゆくて〉へ其のあかり。一筋毎に前なのが薄く成つて、果は森か、山か、何か突当りさうに、むら/\と濡曇つて、魔ものの如く虚空を遮る。……時雨に鐘があらば、其の中から聞えよう。

 243/1139 244/1139 245/1139


  [Index]