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 『婦系図』 青空文庫

 鼻の下はさまででないが、ものの切尖《きっさき》に痩せた頤から、耳の根へかけて胡麻塩髯《ごましおひげ》が栗の毬《いが》のように、すくすく、頬肉《ほおじし》がっくりと落ち、小鼻が出て、窪んだ目が味走って、額の皺は小さな天窓《あたま》を揉込《もみこ》んだごとく刻んで深い。色蒼《あお》く垢じみて、筋で繋《つな》いだばかりげっそり肩の痩せた手に、これだけは脚より太い、しっかりした、竹の杖を支いたが、さまで容子《ようす》の賤《いや》しくない落魄《おちぶれ》らしい、五十近《ぢか》の男の……肺病とは一目で分る……襟垢がぴかぴかした、閉糸《とじいと》の断《き》れた、寝ン寝子を今時分。

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