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『婦系図』
青空文庫
藁草履《わらぞうり》を引摺《ひきず》って、勢《いきおい》の無さは埃《ほこり》も得立てず、地の底に滅入込《めりこ》むようにして、正面から辿って来て、ここへ休もうとしたらしかったが、目ももう疎《うと》くて、近寄るまで、心着かなんだろう。そこに貴婦人があるのを見ると、出かかった足を内へ折曲げ、杖で留めて、眩《まばゆ》そうに細めた目に、あわれや、笑を湛《たた》えて、婆さんの
顔
をじろりと見た。
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