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『薬草取』 青空文庫
娘は乱髪《みだれがみ》になって、その花を持ったまま、膝に手を置いて、首垂《うなだ》れて黙っていた。その返事を聞く手段であったと見えて、私は二晩、土間の上へ、可恐《おそろし》い高い屋根裏に釣った、駕籠《かご》の中へ入れて釣《つる》されたんです。紙に乗せて、握飯《にぎりめし》を突込《つッこ》んでくれたけれど、それが食べられるもんですか。
垂《たれ》から透《すか》して、土間へ焚火《たきび》をしたのに雪のような顔を照らされて、娘が縛られていたのを見ましたが、それなり目が眩《くら》んでしまったです。どんと駕籠《かご》が土間に下りた時、中から五、六疋《ぴき》鼠がちょろちょろと駈出《かけだ》したが、代《かわり》に娘が入って来ました。
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