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 『国貞えがく』 青空文庫

 古本屋は、今日この平吉の家に来る時通った、確か、あの湯屋から四、五軒手前にあったと思う。四辻へ行く時分に、祖母《としより》が破傘《やぶれがさ》をすぼめると、蒼く光って、蓋を払ったように月が出る。山の形は骨ばかり白く澄んで、兎のような雲が走る。
 織次は偶《ふ》と幻に見た、夜店の頃の銀河の上の婦《おんな》を思って、先刻《さっき》とぼとぼと地獄へ追遣られた大勢の姉様は、まさに救われてその通り天にのぼる、と心が勇む。

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