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『薬草取』 青空文庫
垂《たれ》から透《すか》して、土間へ焚火《たきび》をしたのに雪のような顔を照らされて、娘が縛られていたのを見ましたが、それなり目が眩《くら》んでしまったです。どんと駕籠《かご》が土間に下りた時、中から五、六疋《ぴき》鼠がちょろちょろと駈出《かけだ》したが、代《かわり》に娘が入って来ました。
薫《かおり》の高い薬を噛んで口移しに含められて、膝に抱かれたから、一生懸命に緊乎《しっかり》縋《すが》り着くと、背中へ廻った手が空を撫《な》でるようで、娘は空蝉《うつせみ》の殻《から》かと見えて、唯《たっ》た二晩がほどに、糸のように瘠《や》せたです。
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