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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 其の納豆納豆――と云ふのだの、東京と云ふのですの、店前だの、小僧が門口を掃いて居る処だと申しますのが、何んだか懐しい、両親の事や、生れました処なんぞ、昔が思ひ出されまして、身体を煮られるやうな心持がして我慢が出来ないで、掻巻の襟へ喰ひついて、しつかり胸を抱いて、そして恍惚となつて居りますと、やがて、些と強く雨が来て当ります時、内の門へ参つたのでございます。
(えゝ、えゝ、えゝ、)
 と言ひ出すぢやございませんか。

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