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 『歌行燈』 従吾所好

「あゝ、能く言つた。俺を弥次郎兵衛は難有い。居心は可、酒は可。これで喜多八さへ一所だつたら、膝栗毛を正のもので、太平の民となる処を、さて、杯をさしたばかりで、恁う酌いだ酒へ、蝋燭の灯のちら/\と映る処は、何うやら餓鬼に手向けたやうだ。あの又馬鹿野郎は何うして居る――」と膝に手を支き、畳の杯を凝〈じつ〉と見て、陰気な顔する。
 捻平も、不図、此の時横を向いて腕組した。
「旦那、其の喜多八さんを何んでお連れなさりませんね。」

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