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 『婦系図』 青空文庫

 フト立留まって、この茅家《あばらや》を覗《なが》めた夫人が、何と思ったか、主税と入違いに小戻りして、洋傘《ひがさ》を袖の下へ横《よこた》えると、惜げもなく、髪で、件の暖簾を分けて、隣の紺屋の店前《みせさき》へ顔を入れた。
「御免なさいよ、御隣家《おとなり》の屋《いえ》を借りたいんですが、」
「何でございますと、」

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