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 『歌行燈』 従吾所好

「むゝ、そりや何よ、其の本の本文にある通り、伊勢の山田ではぐれた奴さ。いゝ年をして娑婆気な、酒も飲めば巫山戯〈ふざけ〉もするが、世の中は道中同然。暖いにつけ、寒いにつけ、杖柱とも思ふ同伴の若いものに別れると、六十の迷児に成つて、もし、此の辺に棚からぶら下がつたやうな宿屋はござりませんかと、賑かな町の中を独りとぼ/\と尋ね飽倦〈あぐ〉んで、もう落胆〈がつかり〉しやした、と云つてな、どつかり知らぬ家の店頭へ腰を落込んで、一服無心をした処……彼処を読むと串戯ではない。……捻平さん、真から以て涙が出ます。」

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