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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「それも心がらでござります。はじめはお前様、貴女《あなた》が御親切に、勿体ない……お手ずから薫の高い、水晶を噛みますような、涼しいお薬を下さって、水ごと残して置きました、……この手桶から、」……
 と姥は見返る。捧げた心か、葦簀に挟んで、常夏の花のあるが下に、日影涼しい手桶が一個《ひとつ》、輪の上に、――、大方その時以来であろう――注連《しめ》を張ったが、まだ新しい。

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