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『古狢』 青空文庫
落葉のそよぐほどの、跫音《あしおと》もなしに、曲尺《かねじゃく》の角を、この工場から住居《すまい》へ続くらしい、細長い、暗い土間から、白髪《しらが》がすくすくと生えた、八十を越えよう、目口も褐漆《かっしつ》に干からびた、脊の低い、小さな媼《ばあ》さんが、継はぎの厚い布子《ぬのこ》で、腰を屈《かが》めて出て来た。
蒼白《まっさお》になって、お町があとへ引いた。
「お姥《ばあ》さん、見物をしていますよ。」
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