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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

百合 (熟《じっ》としばし)まさかと思うけれど、ねえ、坊や、大丈夫お帰んなさるわねえ。おおおお目ン目を瞑《ねむ》って、頷《うなず》いて、まあ、可愛い。(と頬摺《ほおず》りし)坊やは、お乳《つぱ》をおあがりよ。母《かあ》さんは一人でお夕飯も欲しくない。早く片附けてお留守をしましょう。一人だと見て取ると、村の人が煩《うるさ》いから、月は可《よ》し、灯を消して戸をしめて。――
と框《かまち》にずッと雨戸を閉める。閉め果てると、戸の鍵《かぎ》がガチリと下りる。やがて、納戸の燈《ともしび》、はっと消ゆ。
※[#歌記号、1-3-28]出る化ものの数々は、一ツ目、見越《みこし》、河太郎、獺《かわうそ》に、海坊主、天守におさかべ、化猫は赤手拭《あかてぬぐい》、篠田《しのだ》に葛《くず》の葉、野干平《やかんべい》、古狸の腹鼓《はらつづみ》、ポコポン、ポコポン、コリャ、ポンポコポン、笛に雨を呼び、酒買小僧、鉄漿着女《かねつけおんな》の、けたけた笑《わらい》、里の男は、のっぺらぼう。

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