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 『高野聖』 泉鏡花を読む

(何にしても貴僧には叔母さん位な年紀ですよ。まあ、お早くいらつしやい、草履も可うござんすけれど、刺がさゝりますと不可ません、それにじく/\湿れて居てお気味が悪うございませうから。)と向う向でいひながら衣服の片褄をぐいとあげた。真白なのが暗まぎれ、歩行くと霜が消えて行くやうな。
 ずん/\ずん/\と道を下りる、傍らの叢から、のさ/\と出たのは蟇で。
(あれ、気味が悪いよ。)といふと婦人は背後へ高々と踵を上げて向うへ飛んだ。

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