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 『古狢』 青空文庫

 外套氏は、やや妖変《ようへん》を感じながら、丁寧に云ったのである。
「どうなとせ。」
 唾《つば》と泡が噛合《かみあ》うように、ぶつぶつと一言《ひとこと》いったが、ふ、ふふん、と鼻の音をさせて、膝の下へ組手のまま、腰を振って、さあ、たしか鍋《なべ》の列のちょうど土間へ曲角の、火の気の赫《かっ》と強い、その鍋の前へ立つと、しゃんと伸びて、肱《ひじ》を張り、湯気のむらむらと立つ中へ、いきなり、くしゃくしゃの顔を突込《つっこ》んだ。

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