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 『歌行燈』 従吾所好

「豪いぞ、金盥まで持ち出いたわ、人間は皆裾が天井へ宙乗りして、畳を皿小鉢が踊るさうな。おゝおゝ、三味線太鼓が鎬〈しのぎ〉を削つて打合ふ様子ぢや。」
「もし、お騒がしうござりませう、お気の毒でござります。丁ど霜月でな、今年度の新兵さんが入營なさりますで、其の送別会ぢや言うて、彼方此方、皆、此の景気でござります。でもな、お寝〈よ〉ります時分には時間に成るで静まりませう。何うぞ御辛抱なさいまして。」

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