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 『人魚の祠』 青空文庫

 で、何時何処から乗組んだか、つい、それは知らなかつたが、丁《ちやう》ど私たちの並んで掛けた向う側――墓地とは反対――の処に、二十三四の色の白い婦人が居る……
 先づ、色のい婦《をんな》と云はう、が、雪なすさ、冷《つめた》さではない。薄桜《うすざくら》の影がさす、朧に香《にほ》ふ装《よそほひ》である。……こんなのこそ、膚《はだへ》と云ふより、不躾ながら肉と言はう。其《その》胸は、合歓《ねむ》の花が雫しさうにほんのりと露《あらは》である。

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