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 『雛がたり』 青空文庫

 で、家中《かちゅう》が寝静まると、何処か一ケ所、小屏風が、鶴の羽に桃を敷いて、すッと廻ろうも知れぬ。……御睦《おんむつ》ましさにつけても、壇に、余り人形の数の多いのは風情がなかろう。
 但し、多いにも、少いにも、今私は、雛らしいものを殆ど持たぬ。が大事にしたのは、がなくなって後《のち》、町に大火があって皆焼けたのである。一度持出したとも聞くが、混雑に紛れて行方を知らない。あれほど気を入れていたのであるから、大方は例の車に乗って、雛たち、火を免れたのであろう、と思っている。

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