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『逢ふ夜』 従吾所好
実は大病だつたので、親許へ帰つて養生して、最う此のくらゐにまでも快く成つたが、まだ、枕に着いて居る分で、抱主の方へは帰らないから、義理で、晴れて逢はれぬのである。
処を、優しい、実の母親が合点で、今夜なぞも何処か近所の、目立たない鳥屋の、奥二階あたりで密と逢つた。
「貴方がお好だから、今日はね、朝つから掛つて、新栗で、(ふくませ)を拵へて置いたのよ。……宵に誘つて下すつた時、お茶うけに上げませうと思つたけれど、これから一口あがるのに、先に立つて甘いものは不可ませんから、出さないで置きました。帰りがけに寄つて頂戴。」
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