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 『婦系図』 青空文庫

 早瀬は起上って、棚の残燈《ありあけ》を取って、縁へ出た。次の書斎を抜けるとまた北向きの縁で、その突当りに、便所があるのだが、夫人が寝たから、大廻りに玄関へ出て、鞠子の婢《おさん》の寝た裙《すそ》を通って、板戸を開けて、台所《だいどこ》の片隅の扉《ひらき》から出て、小用を達《た》して、手を洗って、手拭を持つと、夫人が湯で使ったのを掛けたらしい、冷く手に触って、ほんのり粉の香《におい》がする。

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