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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 嘉吉の奴がの、あろう事か、慈悲を垂れりゃ、何とやら。珠は掴む、酒の上じゃ、はじめは唯、御恩返しじゃの、お名前を聞きたいの、唯一目お顔の、とこだわりましけ。柳に受けて歩行《ある》かっしゃるで、機織場の姉やが許へ、夜さり、畔道を通う時の高声の唄のような、真似もならぬ大口利いて、果は増長この上なし、袖を引いて、手を廻して、背後《うしろ》から抱きつきおる。
 爺《じじい》どのは冷汗掻いたげな。や、それでも召ものの裾に、草鞋が引かかりましたように、するすると嘉吉に抱かれて、前ざまに行かっしゃったそうながの、お前様、飛んでもない、」

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