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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

鐘撞先生には何事もねえと見えるだ。まんだ、丈夫に活《い》きてござって、執殺《とりころ》されもさっしゃらねえ。見ろやい、取っても着けねえ処に、銀の鱗さ、ぴかぴかと月に光るちッて、汝《われ》がを、(と鯉をじろじろ)ばけものか蛇体と想うて、手を出さずば、うまい酒にもありつけぬ処だったちゅうものだ。――嬢様が手本だよ。はってな、今時分、真暗《まっくら》だ。舐殺《なめころ》されはしねえだかん、待ちろ。(と抜足で寄って、小屋の戸の隙間《すきま》を覗く。)

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