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 『歌行燈』 従吾所好

「へい、按摩がな。」と何か知らず、女中も読めぬ顔して聞返す。
 捻平此の話を、打消すやうに咳〈しはぶき〉して、
「さ、一献参らう。何うぢや、此方へも酌人を些と頼んで、……えゝ、それ何んとか言ふの。……桑名の殿様時雨でお茶漬……とか言ふ、土地の唄でも聞かうではないかの。陽気にな、くわつと一つ。旅の恥は掻棄てぢや。主はソレ叱言のやうな勧進帳でも遣らつしやい。

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