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 『婦系図』 青空文庫

 隔ての襖が、より多く開いた。見る見る朱《あか》き蛇《くちなわ》は、その燃ゆる色に黄金の鱗の絞を立てて、菫の花を掻潜《かいくぐ》った尾に、主税の手首を巻きながら、頭《かしら》に婦人の乳の下を紅見せて噛んでいた。
 颯と花環が消えると、横に枕した夫人の黒髪、後向きに、掻巻の襟を出た肩の辺《あたり》が露《あらわ》に見えた。残燈《ありあけ》はその枕許にも差置いてあったが、どちらの明《あかり》でも、繋いだものの中は断たれず。……

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