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 『婦系図』 青空文庫

 ぶるぶる震うと、夫人はふいと衾《ふすま》を出て、胸を圧えて、熟《じっ》と見据えた目に、閨の内を〓《みまわ》して、〓《ぼう》としたようで、まだ覚めやらぬ夢に、菫咲く春の野を〓〓《さまよ》うごとく、裳《もすそ》も畳に漾《ただよ》ったが、ややあって、はじめてその怪い扱帯《しごき》の我を纏《まと》えるに心着いたか、あ、と忍び音に、魘《うな》された、目のしい蝶の顔は、俯向けに菫の中へ落ちた。

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