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 『婦系図』 青空文庫

 その時女房に勘当されたが、やっとよりが戻って以来、金目な物は重箱まで残らず出入先へ預けたから、家には似ない調度の疎末《そまつ》さ。どこを見てもがらんとして、間狭《ませま》な内には結句さっぱりして可《よ》さそうなが、お妙は目を外らす壁張りの絵も無いので、しきりに袂《たもと》を爪繰って、
「可いのよ、小さん、髪結さんの許《とこ》だから、極りが悪いからそう云って来たけれど、髪なんぞ結《い》わなくったって構わなくってよ。ちっとも私、結いたくはないの、」

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