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 『人魚の祠』 青空文庫

 藍地に紺の立絞《たてしぼり》の浴衣を唯一重、糸ばかりのも見せず素膚に着た。襟をなぞへに膨《ふつく》りと乳を劃《くぎ》つて、衣《きぬ》が青い。青いのが葉に見えて、先刻《さつき》の白い花が俤立《おもかげだ》つ……撫肩《なでがた》をたゆげに落して、すらりと長く膝の上へ、和々《やは/\》と重量《おもみ》を持たして、二の腕を撓《しな》やかに抱いたのが、其が嬰児《あかんぼ》で、仰向けに寝た顔へ、白い帽子を掛けてある。寝顔に電燈を厭つたものであらう。嬰児《あかんぼ》の顔は見えなかつた、だけ其だけ、懸念と云へば懸念なので、工学士が――鯉か鼈《すつぽん》か、と云つたのは此であるが……

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