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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 泰助屹と眼を着けて、「お前様《さん》は何しに来たのだ。問はれて醜《むくつけ》き巌丈男の声ばかり悪優しく。「へい/\、お邪魔様申します。些《ちと》お見舞に罷出《つんで》たんで。「知己《ちかづき》のお方かね。「いえ、唯通懸つた者でがんすが其の方が強《えら》くお塩梅の悪い様子、お案じ申して、へい、故意《わざと》。といふ声耳に入りたりけむ。其男を見て、病人は何か言ひたげに唇を震はせしが、あはれ口も利《き》けざりければ、指もて其方を指示《さししめ》し、怒り狂ふ風情にて、重き枕を擡《もた》げしが、〓《どう》と倒れて絶入りけり。

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