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『貝の穴に河童の居る事』
青空文庫
しばらくすると、薄墨をもう一刷《ひとはけ》した、
水
田《みずた》の際を、おっかな吃驚《びっくり》、といった形で、漁夫《りょうし》らが屈腰《かがみごし》に引返した。手ぶらで、その手つきは、大石投魚を取返しそうな構えでない。鰌《どじょう》が居たら押《おさ》えたそうに見える。丸太ぐるみ、どか落しで遁《に》げた、たった今。……いや、遁げたの候の。……あか褌《ふんどし》にも恥じよかし。
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