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 『婦系図』 青空文庫

 とそれまで遠慮したらしかったが、さあとなると、飜然《ひらり》と縁を切って走込むばかりの勢《いきおい》――小芳の方が一目先へ御見の済んだ馴染《なじみ》だけ、この方が便りになったか、薄くお太鼓に結んだ黒繻子のその帯へ、擦着《すりつ》くように坐って、袖のわきからだけ出して、はじめて逢ったお蔦のを、瞬もしないで凝《じっ》と視《なが》める。

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