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 『歌行燈』 従吾所好

「かいな、旦那さん、お気の毒さまでござります。狭い土地に、数のない芸妓やに依つて、恁うして会なんぞ立込みますと、目星い妓たちは、ちやつとの間に皆出払ひます。然うか言うて、東京のお客様に、余りな人も見せられはしませずな、容色〈きりやう〉が好いとか、芸がたぎつたとか言ふのでござりませぬとなあ……」
「いや、恁うなつては、宿賃を払はずに、此方人等〈こちとら〉夜遁をするまでも、三味線を聞かなきや納まらない。眇〈めつかち〉、いぐちでない以上は、古道具屋からでも呼んでくれ。」

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