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 『婦系図』 青空文庫

 とさも羨しそうに小芳が云うと、お妙はフト打仰向いて、目を大きくして何か考えるようだったが、もう一つの袂から緋天鵝絨《ひびろうど》の小さな蝦蟇口《がまぐち》を可愛らしく引出して、
「小さん、これを上げましょう。怒っちゃ可厭よ。沢山《たんと》あると可いけれど、大《おおき》な銀貨(五十銭)が三個《みッつ》だけだわ。
 先《せん》の紙入の時は、お紙幣《さつ》が……そうねえ……あの、四円ばかりあったのに、この間落してねえ。」

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