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『五大力』 従吾所好
一寸、無言の間に、小弥太は、前途〈むかう〉に未〈ま〉だ消残る其の地を這つた水明りが、一筋、路を横に拡がつた、……其処を的〈あて〉に、顔を、姿を、と思つた。が、いざうれ、それと窺ふと、物置の一ツ其の隙間が、水嵩高く、どんよりと、雨も川も小さな湖ほどに見えた。其の水面に、人の無い、大きな船が茫と浮んで、だぶん、天〈そら〉さまに舳が揺れた拍子に、川波がどつと揺れて、足駄を掬つて、ざぶりと流れた。驚く途端に、顔容〈かほかたち〉さへ、婦の片袖も何も見えぬ。
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