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『国貞えがく』
青空文庫
「唯《はい》、ござりえす、出しますかえ。」と女房は判然《はっきり》言った。
「難有う、お琴さん。」
とはじめて親しげに名を言って、凝《じっ》と振向くと、浪の浅葱の暖簾越に、また颯と顔を赧らめた処は、どうやら、あの錦絵の中の、その、どの一人かに俤が幽《かすか》に似通う。……
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