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 『日本橋』 青空文庫

「鑑札のお代だって余計なものだのに、電話なんか無駄だからって、それで、譲ってしまったんでしょう。一昨日から、内にはボンボン時計も無いんでしょう。ですから、チンリンと云う音もしないで、寂寞ぽかんとしているんですわ。
 方々、お茶屋さんだの、待合さんへ、そう云っておいでって云うんでしょう。――私がずッと廻りましたの。
 姉さん。――はじめてお弘めに連れられました時よりか、私極りが悪かったんです。……だって、ただ、(ああそうですか御苦労様。)ってお言いなさる許は可いんですけれども、中にはねえ、(どうして。)って。……いいえ、冷評すんじゃありません、深切で聞いて下さるお家では、(私がちっとも出ませんから。)

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