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 『古狢』 青空文庫

 今年、四月八日、灌仏会《かんぶつえ》に、お向うの遠藤さんと、家内と一所に、麹町《こうじまち》六丁目、擬宝珠《ぎぼうし》屋根に桃の影さす、真宝寺の花御堂《はなみどう》に詣《もう》でた。寺内に閻魔堂《えんまどう》がある。遠藤さんが扉を覗いて、袖で拝んで、
「お釈迦様と、お閻さんとは、どういう関係があるんでしょう。」
 唯今、七彩五色の花御堂に香水を奉仕した、この三十歳の、竜女の、深甚微妙なる聴問には弱った。要品《ようほん》を読誦《どくじゅ》する程度の智識では、説教も済度も覚束《おぼつか》ない。

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