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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

蟹五郎 その事かい、御苦労、御苦労。ところで、大池の姫様《ひいさま》には、なかなか雨を下さる思召《おぼしめし》は当分ないかい。
鯉七 分らんの。旱は何も、姫様《ひいさま》御存じの事ではない。第一、其許《そこもと》なども知る通りよ。姫様は、それ、御縁者、山《はくさん》の剣ヶ峰千蛇ヶ池の若旦那にあこがれて、恋し、恋しと、そればかり思詰めてましますもの、人間の旱なんぞ構っている暇があるものかッてい。

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