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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 婦人は何時かもう米を精げ果てて、衣紋の乱れた、乳の端もほの見ゆる、膨らかな胸を反して立つた、鼻高く口を結んで目を恍惚と上を向いて頂を仰いだが、月はなほ半腹の其の累々たる巌を照すばかり。
(今でも恁うやつて見ますと恐いやうでございます。)と屈んで二の腕の処を洗つて居ると。
(あれ、貴僧、那様行儀の可いことをして被在しつてはお召が濡れます、気味が悪うございますよ、すつぱり裸体になつてお洗ひなさいまし、私が流して上げませう。)

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