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 『義血侠血』 青空文庫

「どうといって、やっぱり食う算段さ。高岡に彷徨《ぶらつ》いていたって始まらんので、金沢には士官がいるから、馬丁《べっとう》の口でもあるだろうと思って、探しに出て来た。今日も朝から一日奔走《かけある》いたので、すっかり憊《くたび》れてしまって、晩方一風呂入ったところが、暑くて寝られんから、ぶらぶら納涼《すずみ》に出掛けて、ここで月を観ていたうちに、いい心地《こころもち》になって睡《ね》こんでしまった」
「おや、そう。そうして口はありましたか」
「ない!」と馭者は頭を掉りぬ。

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