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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

「屹と然うと極りませんから、もしか、死んで其れツ切りになつては情ないんですもの。其くらゐなら、生きて居て思ひ悩んで、煩らつて、段々消えて行きます方が、幾干か増だと思ひます。忘れないで、何時までも、何時までも、」
 と言ひ/\抜き取つた草の葉をキリ/\と歯で噛んだ。
 トタンに慌しく、男の膝越に衝とのばした袖の色も、帯の影も、緑の中に濃くなつて、活々として蓮葉なものいひ。

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