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 『婦系図』 青空文庫

 と寝転ぶようにして、頬杖ついて、畳の上で読むのを見ながら、抜きかけた、仏壇の抽斗《ひきだし》を覗くと、そこに仰向けにしてある主税の写真を密《そっ》と見て、ほろりとしながら、カタリと閉めた。懐中《ふところ》へ、その酒井先生恩賜の紙幣《さつ》の紙包を取って、仏壇の中に落ちた線香立ての灰を、フッフッと吹いて、手で撫でる。
 戸外《おもて》を金魚売が通った。
「何でしょう。この小使は、また可訝《おかし》なものじゃないの、」

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