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 『婦系図』 青空文庫

 小芳が火を起すと、気取気の無いお嬢さん、台所へ土瓶を提げて出る。お蔦も勢《いきおい》に連れて蹌踉《よろよろ》起きて出て、自慢の番茶の焙《ほう》じ加減で、三人睦くお取膳。
 お妙が奈良漬にほうとなった、顔がほてると洗ったので、小芳が刷毛《はけ》を持って、颯とお化粧《つくり》を直すと、お蔦がぐい、と櫛を拭《ふ》いて一歯入れる。
 苦労人《くろうと》が二人がかりで、妙子は品のいい処へ粋になって、またあるまじき美麗《あでやか》さを、飽かず視《なが》めて、小芳が幾度も恍惚《うっとり》気抜けのするようなのを、ああ、先生に瓜二つ、御尤《ごもっと》もな次第だけれども、余り手放しで口惜《くやし》いから、あとでいじめてやろう、とお蔦が思い設けたが、……ああ、さりとては……

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